PCで苔を育てる人

自作シミュレーションゲームPraparatを作っています。 人工生命をシミュレーションするゲームです。https://www.nicovideo.jp/watch/sm41192001

イタリアのシャワーに分からされたときの話

(本記事は2019/01/28に書かれた日記を一部改変したものです)

 

海外は特にシャワーで困ることが多い。

シャワールームは電話ボックスのような直方体の部屋で、人1人分のスペースしかない上に、シャワーヘッドは蛇口のように壁に備え付けてあるため動かすことが出来ず、出し始めのまだ冷たい水から逃れる術がないのである。

参考 : 電話ボックスみたいなシャワールーム(イギリス)

一番頭がおかしいと思ったのはアメリカのシャワーで、1つのハンドルで、「止める」、「水を出す」、「お湯を出す」をコントロールする。

初め「止める」の位置にあったダイヤルを回すと最初に水が出て、さらに回すと徐々にお湯になるという仕組みなのだが、例によってシャワールームは逃げ場がなく、ハンドルもシャワーヘッドの真下にあるため、お湯を浴びていた状態からシャワーを止めるためには必ず水浴びを経由しないといけないのである。

参考 : 1つのハンドルで全てを制御する固定されたシャワーヘッド(アメリカ)

ところが、今回宿泊したところはどうだろうか。

駆動可能な見事なシャワーヘッドである。

参考 : 駆動可能な見事なシャワーヘッド(イタリア)

これならば、シャワーの口を左手に向けて右手でハンドルを回すことで、お湯加減を確かめた後でシャワーを浴びることが出来る。

海外でのシャワー事情は半ばあきらめていたのだが、これは思わぬ収穫であった。

私は長旅で疲れた体を癒やすため、さっそくシャワーを浴びたのだが、まさかこのビジュアルで天井から水が出てくるとは…

てっきりあれは換気扇か何かかと思っていた。

参考 : 換気扇か何かかと思ったらシャワーの口だったやつ

この歳になって、大雨に打たれるという経験はほとんどなくなっていたが、まさにそんな感じであった。

幼稚園の頃、突然教室から飛び出し、大雨で壊れた雨樋から滝のように流れ出る雨水を「修行」と称して頭から浴びだしたタクヤくん(仮名)。

先生2人に全力で止められる彼を見て

酸性雨でハゲるぞ」

と内心思っていたが、彼は決して悪ふざけでやっていたのではないのかもしれない*1

哲学者デカルトは、彼の提唱した方法的懐疑の中で、これまで無批判に受け入れてきたものを徹底的に疑い、不確実性のあるものを否定した*2

雨樋は、雨水を速やかに地に返す物であるという常識を彼は疑い、大雨の中飛び出したのかもしれない。その方法は、デカルトの提唱したやり方とは大きく異なっていたが、それでも彼のとった行動は、今の自分の行動を省みらせるには十分に足るものであった。

私は天井につけられたそれを、換気扇だと思って疑わなかった。

先生に怒られたタクヤくんは笑っていたが、笑われていたのは、私たちの方だったのかもしれない。

身の回りのものを疑いもせず受け入れてきた我々が、やはり何も疑わずに彼の行動を咎めるのを見て、それが堪らなく可笑しくて、彼は笑っていたのだろう。

彼は元気にしているだろうか。

 

*1:酸性雨でハゲるという科学的根拠はありません

*2:哲学にわか著者のてきとうな解釈が含まれます